前にも書いたが、サピックスのプリントは復習用に同じ問題が用意されている。
改めて、復習って大事だよなと思ったとき、
前に読んだ本に「反復の重要性」について書かれていたのを思い出して、その本をもう一度読み始めた。
Contents
ディーププラクティス
自分はビジネス書とか自己啓発書の類をちょいちょい読む。
特に、心理学とか脳に関する本ってのは興味があり本屋で手に取る傾向が強い。
この本はちょっと前に買ったものだが、
人間の能力アップについて書かれてあり、
自分の中では永久保存版の一冊になっているので、今回はこの本の内容を記載する。
ディーププラクティスとは、ざっくりいうと、
集中して反復練習をすること。
「いやぁ、普通のことじゃん」
と思うかもしれないが、実はこれがなかなかできてない。
例えば仕事や勉強などで、
「あー、これやったことあるんだけど、なんだっけかなぁ」
といったような経験はないだろうか。
これは反復の回数が足りなくてまだ自分のものになっていない状態。
何回も繰り返し学習することで、脳に
「これは重要な情報なんだ」
と叩き込まなければならない。
何回も反復することで、脳内でミエリンという物質が増強される。
ミエリンとは
神経細胞を繋ぐソーセージ状の物質。
このミエリンが貧弱だと、神経細胞体に到達するまでに時間がかかってしまい、
「なんだったけかなぁ・・・」とすぐに思い出せない状態となる。
しかし、何度も反復学習をすると、ミエリンが増強され神経細胞にすぐ到達することができる。
このミエリン、記憶力の強化もそうだがスキル習得も同じことが言える。
そしてこの本で天才と言われる人は、
ミエリンを増強するディーププラクティスを1万時間行っていたという。
天才と言われる人
天才という言葉は、なんとなく
生まれながらにして能力を持った人
という響きがあり、努力で到達できない境地にいると思われがちだ。
と言うのも、素晴らしい成果を出している人を見る際、
その成果のみに注目されて、その人の辿ってきた道のりや継続的な努力については注目されない。
そのため、
「あんなすごいことできるって、生まれながらの才能だよな」
と、天才は自分たちとは違う異次元の存在と見なしてしまう。
しかし、天才と言われる人たちは、我々が知らないだけで
その成果を出すまでにとてつもない努力と時間を費やしている。
これは、過去の偉人についても同様である。
本書は色々と例を挙げているが、
ここでは、ミケランジェロとモーツアルトについて記載する。
ミケランジェロ
ルネッサンスを代表する芸術家。
以下、本書の引用。
彼は6歳から10歳まで石工の一家とともに暮らし、読み書きより先に金づちやのみの扱い方を覚えた。
その後、学問を学ぼうとしたがうまくいかず、大画家ギルランダイオに弟子入りする。
そこでスケッチ、模写、そしてフィレンツェで最も大きな教会のフレスコ画の準備などをすることで大作の制作に関わった。
その後、ミケランジェロは名彫刻家ベルトルドに弟子入りし、17歳になるまで住み込んだロレンツォ・デ・メディチの家で
家庭教師から学問を学んだ。
彼は前途有望だったが、24歳でピエタ像を制作するまではほとんど無名だった。
ピエタは稀に見る傑作と称賛されたが、本人はこれを否定した。
「私が技術を身につけるのにどれだけ苦労したを知っていれば、
そんなにすばらしいものではないだろう」
モーツアルト
5歳で作曲をしたということから、
「生まれながらの才能としか説明ができない」と思われがちだが、
このモーツアルトにしても本書では以下のように述べている。
イギリスのエクセター大学のマイケル・ハウ博士は、
その著書『Genius Explained(解き明かされる天才)』で、
モーツアルトは6歳の誕生日までに父親から3500時間の音楽教育を受け、
その結果、彼の音楽の記憶はきわめてすばらしい、
それでいて、達成可能なスキルの領域に導かれたと推定している。
ミケランジェロもモーツアルトも、
長い年月をかけて努力をしてきたのだ。
ただ、その努力のやり方がミエリンを増強するような効果的な訓練だったと推測される。
サバン症候群の人はどうか
発達障害や知的障害のある人で、ある特定の分野に秀でた才能を発揮する人たちを
サバン症候群というが、この人たちの才能はどう説明するのか。
本書では以下のように書かれている。
ぶらぶらとピアノやルービックキューブに近づいて、
突然魔法のような腕前を披露するサバン症候群の人はどうか?
(中略)
サバン症候群の人は、明確で論理的なルールのあるごく限られた分野で秀でる傾向にある。
自宅で音楽を聴くといった方法により、通常はそうした分野に関わる経験を大量に蓄積する。
そうした天才の真の専門技術は、必ずしも練習をしているようには見えないといでも、
取りつかれたようにディーププラクティスを行う能力にあると考えられている。
やはり、サバンの人たちもまた、
本人たちは「努力している」という意識がなくとも興味のある対象に相当の時間を割いて取り組んでいるのだ。
効果的な訓練
本書では、ミエリンを増強する効果的な訓練をいくつか記載している。
その中でも自分が特に重要と思う3つを以下に記載する。
小さな塊に分割する
スキルを習得しようとしたら、その対象を細分化する。
分かりやすい例として、音楽の演奏を挙げると、
一曲を通して弾くのではなく、小節ごとに区切って練習する。
自分がどこを苦手としているのかを把握して、その箇所を特定する。
ペースを落とす
一つ一つ、着実に、ゆっくりやる。
音楽の演奏であれば、曲の速さは楽譜に記載されているが、
いきなりそんなスピードでやる必要は全くない。
未熟なうちに早くやろうとすると、演奏が雑になってしまい
効果的な訓練ではなくなってしまう。
遅く練習することで自分のミスに注意を向けることができ、
それにより、修正して精度を高めることが可能となる。
ミエリンの形成は何よりも正確さが重要。
繰り返す
そして、繰り返す。
ただ漫然と繰り返すのではなく、
その動きを実行し、神経線維に信号を送り、ミスを修正し、精度を上げていく。
経験談
自分自身の経験というより、長男のピアノのレッスンについてなのだが、
コロナウイルスが蔓延するまで、長男はとある先生のところでピアノを習っていた。
その先生は、80歳を優に超えるおばあちゃんなのだが、
先生の娘さんが、日本を代表するピアニストなのだ。
ある日、長男のレッスンに自分も一緒について行った時のこと。
「どんな魔法のようなレッスンなんだろう」
と思って注意深く見ていると・・・
「小さな塊に分割する」→「ペースを落とす」→「繰り返す」
まさにこれだった。
小節ごとに区切って、何度もやらせる。
ちょっとでも間違えると、
「うーん、もう一回だなぁ」といって同じところを繰り返す。
この本を読んで改めて思った。
このおばあちゃん、
ミエリンを増強する
ディーププラクティスを行っていたのだ。
そして、このおばあちゃん、
だいぶ高齢ということもあって身体は弱ってきているのだが、
まったくボケてない!!
その後も何度か長男のレッスンについて行き、レッスンの予定日を確認することがあったのだが、
俺の方がレッスン日を聞き漏らすことがあり注意されたことがある。
「お父さん、しっかりしてください」と。
それと、たまにご自宅に娘さんもいらっしゃるのだが、
年齢の割にはだいぶ若い。
小さい頃からこのおばあちゃんに鍛えられ、ミエリンが増強したからだろうか。
※先生が高齢という事もあり、コロナが蔓延し始めた2020年初めころから長男のピアノレッスンは中断。代わりに2020年夏ごろからバイオリンを習い始めて現在でも継続中。
勉強への応用
上記のやり方を踏まえて、勉強への応用はどのようにすべきか。
そう、繰り返す。
集中して繰り返す。これに尽きる。
算数において、サピックスでは「基礎力トレーニング」というテキストが配られ、
1日1ページを毎日やる宿題が出ている。
この10問という分量が絶妙だ。
これ以上多くなると、まだ勉強に慣れていない小学3年生はやる気を失う可能性がある。
毎日、コツコツ。
この積み重ねがミエリンを増強し、勉強する体力を養っていくのだろう。
ちなみに、今回紹介した「ディーププラクティス」の本に書かれていた、
個人的に好きな名言があるのでご紹介する。
80代まで演奏を続けたピアノの巨匠、ウラディミール・ホロヴィッツはこう語っていた。
「一日練習をサボれば、自分が気付く。
二日練習をサボれば、妻が気付く。
三日練習をサボれば、世界が気付く」
これ、おれも言いてぇーーー!!
大人の勉強は・・・
上記は小学3年生の算数を例に挙げたが、大人の勉強の場合はどう応用するか。
勉強と言っても色々あるが、
「記憶力強化」について、この本に使えそうな内容が記載されていた。
以下のAとBに書かれた単語を見てほしい。
このAとBの単語を覚えようとすると、
Bの方が3倍も多く思い出せるという研究結果があるという。
以下、本書引用。
(Bの)空欄を含む単語を見たとき、些細なことが起きた。
単語を追う目を止め、一瞬つかえ、それから理解した。
1マイクロ秒の葛藤を経験し、そのマイクロ秒で違いが生じた。
リストBを見ながら一生懸命練習したのではない。
より深い練習、つまりディープ・プラクティスを行ったのだ。
これを読んで思った。
高校の時にやっていた、
教科書にマーカーひいて、
シートで隠して暗記していたあれだ!!
そういやこの前、電車の中で高校生がこれやって勉強してた。
学生のやり方みたいで、大人になってからこういうやり方はやってなかったが、
ディーププラクティスの観点からすると、非常に効率的な記憶方法なのだろう。
今後、資格試験や何かの勉強の際は、自分もこのやり方を取り入れようと思う。
まとめ
このディーププラクティスの本、まだまだ興味深い例や研究機関の調査結果など
ここでは紹介しきれないほどたくさん記載されている。
今後も折に触れてこの本の内容を引用していこうと思っているが、
興味を持たれた方は是非本書を手に取ってみることをお勧めする。
最後にスキル習得のためのディーププラクティスを再掲。
「小さな塊に分割する」
「ペースを落とす」
「繰り返す」